自己解離 wikipedia|無料辞書
◆定義
溶媒分子を、プロトンを明らかにして HSol と書くと、この溶媒の自己解離平衡は
:2 HSol H2Sol+ + Sol−
と書くことができる。例えば、
:水: 2 H
2O
H3O+ + OH
−
:メタノール:2 MeOH MeOH2+ + MeO−
である。ただし、遊離のプロトンが存在しているわけではなく常に
溶媒和している。プロトンを受容した溶媒
陽イオンを
リオニウム (lyonium)、プロトンを供与した溶媒
陰イオンを
リエイト (lyate)と呼ぶ
[N. Bjerrum, 1935.]。
◇酸塩基平衡
溶媒HSol中において以下のような
酸HAの
電離平衡が右辺に著しく偏りリオニウムを定量的に生成する場合、HAは溶媒HSol中において
強酸であり、平衡が左辺に偏る場合は
弱酸として挙動する
[田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年]。
:HSol + HA H2Sol+ + A−
また溶媒HSol中において以下のような
塩基Bの電離平衡が右辺に著しく偏りリエイトを定量的に生成する場合、Bは溶媒HSol中において
強塩基であり、平衡が左辺に偏る場合は
弱塩基として挙動する
。
:HSol + B HB+ + Sol−
◆自己解離定数
自己解離平衡において、生成したリオニウムとリエイトの濃度の積は温度と圧力に依存する一定の値であり、これを
自己解離定数、または
イオン積と呼び
Kapで表す。厳密にはイオン濃度の代わりにイオン
活量を用いるが、一般的に自己解離により生成するイオン濃度は小さいため無限希釈と見做され濃度と活量はほぼ一致する。
水の場合は一般に KWで表し、
である。25 ℃の場合、約10−14である。また、この対数をとって符号を変えた pKap (−logKap)または pKW (水の場合約14)を自己解離定数またはイオン積と呼ぶこともある。
自己解離定数は溶媒のプロトン供与性および受容性が高いほど大きくなり、また
比誘電率が高いほど解離しやすくなる。また溶媒の比
電気伝導度は自己解離により生成するイオンの濃度と移動度の積にほぼ比例し、またイオンの移動度は
電気泳動的で特にイオン半径の大きなものは
ストークスの法則に支配され、溶媒和イオンの半径が小さいほど高く、溶媒の
粘度に
反比例する
[田村英雄, 松田好晴 『現代電気化学』 培風館、1978年][藤代亮一, 和田悟朗, 玉虫伶太 『溶液の性質II 現代物理化学講座8』 東京化学同人、1968年]。ただし、この比伝導度は水分など極微量の不純物に著しく影響され、自己解離定数の小さい溶媒は特に
誤差が大きい。