犬食文化が忌避される理由は、多分に文化的な要因に負うところが大きいが、一般的には人間と心情レベルでコミュニケーションを取れる動物をある時点を以て食用と見なすことに対する心理的な違和感から来るものであり、犬をペットと見なす文化圏においてこの感情は強い。しかし、食糧事情が切迫している状況においてこれを食すことに対しては
人食に対する嫌悪と異なり、一般に倫理的な批判が向けられることはない
[例えばアムンゼン隊の南極到達において彼らは食料に窮し犬ぞりの犬を食したが、これは予め食料として想定されていたものであり、ここには倫理的な批判は向けられていない。in The Last Place on Earth: Scott and Amundsen's Race to the South Pole by Roland Huntford Modern Library (September 7, 1999) ]。
犬食の習慣が一時的に衰退し、再び盛んになる背景として、犬食文化に対する忌避が外圧によってもたらされ、為政者がその主張を国民に押し付けてくることに対する反発が上げられる。犬食文化への批判者(主に西欧)による主張が、自分達の文化の優位性にもとづき、本来相対的に理解するべき他国の食文化を野蛮なもの、倫理的に劣ったものとして批判する似非普遍主義的な
エスニック・セントリズム(
自文化中心主義)から派生していることに、犬食の習慣を批判されている国や地域の人々が気が付くようになったということである。
華北では、
五胡十六国時代に
鮮卑など北方遊牧民族の支配を受けた影響から、犬食に対する嫌悪感が広まった。
北方民族が入らなかった
南朝でも、5世紀頃から犬を愛玩用として飼う風習が広まり、特に上流
階級は
ペルシャ犬を愛好した。この為、南朝でも犬食を卑しいとする考えが広まり、時代が進むに連れて犬食の風習は廃れていった。但し『
本草綱目』にも犬の記載があり、全く廃れた訳ではなかった。現在でも、
広東省、
広西チワン族自治区、
湖南省、
雲南省、
貴州省、
江蘇省等では、広く犬食の風習が残っている。江蘇省
沛県や貴州省
関嶺県花江、
吉林省延辺朝鮮族自治州は犬肉料理で有名な場所である。地名にも養殖場があった場所として、「狗場」等の名が使われている場所が多くある。
広東省広州では「狗肉」(
広東語カウヨッ)の隠語として「三六」(サムロッ)や「三六香肉」(サムロッヒョンヨッ)と呼ぶが、「3+6=9」で同音の「狗」を表した表現である。概ね、シチューに似た煮込み料理に加工して食べられる。調理済みの
レトルトパックや、冷凍犬肉も流通している。