地上権 wikipedia|無料辞書
地上権(ちじょうけん)とは、
民法に規定された
用益物権の一つで、工作物または竹木を所有するためなどの目的で、他人の土地を使用する権利のこと()である。
以下において、民法の条文に言及するときは、条文の番号のみを記述する。
◆ 総説
◇ 地上権の目的
民法では工作物や竹木の所有が地上権の目的として挙げられている()。耕作や牧畜を目的とする場合には、永小作権()を設定すべきであるから、地上権を設定することはできない。
◇ 地上権の趣旨
地租改正により、
一物一権主義が原則となり、従来認められてきた
上土権などの下位所有権の存続が困難となったため、それに代わる権利として
永小作権、
地役権などとともに法定の用益物権として規定された。ただし、多くの場合、土地の利用権の設定は
賃貸借契約によってなされるのが普通であり、地上権が用いられるのは例外的な場合に留まる。
◆ 地上権の効力
◇ 地上権者の権利
・土地使用権
:地上権者は目的の範囲内で土地を使用する権利を有する()。地上権者間あるいは地上権者と土地所有者との関係については原則として
相隣関係の規定が準用される()。
・地上権の処分権
:土地賃借権とは異なり、地上権者は土地所有権者の承諾なしに地上権を第三者に賃貸あるいは譲渡できる。
◇ 地上権者の義務
・地代支払義務
:地上権が有償である場合には地上権者は土地所有者に地代を支払う義務を負う。地代が定期払いの場合にはからまでの規定が準用され、また、その性質に反しない限り賃貸借に関する規定が準用される()。
・工作物等の収去義務()
◆ 地上権の存続期間
・地上権者は設定行為に地上権の存続期間が定められておらず別段の慣習もないときには、いつでもその権利を放棄することができる(1項本文)。ただし、地代支払義務がある場合には1年前に予告するか、または、期限の到来していない1年分の地代を支払わなければならない(1項但書)。
・地上権者が268条1項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により20年以上50年以下の期間で工作物や竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮してその存続期間を定める(2項)。
◆ 地上権の終了
地上権者は地上権消滅時時に土地を原状に回復して土地上の工作物及び竹木を収去することができる(1項本文)。ただし、土地所有者が時価相当額を提供して土地上の工作物や竹木を買い取る旨を通知したときには、地上権者は正当な理由がなければこれを拒むことができない(1項但書)。この場合に269条1項の規定と異なる慣習があるときには慣習による(2項)。
◆ 区分地上権
地下や土地上の空間の一定の範囲を目的として設定される地上権を区分地上権という。地下に設定される地下権と、土地上の空間に設定される空中権がある。
◇ 地下権
地下は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができ、この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる(269条の2第1項)。第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有している場合にも、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があることを条件に設定可能である(第2項)。
◇ 空中権
空中権(くうちゅうけん)とは、土地の上の空間を目的とする地上権の俗称である。民法第269条の2で規定される。建物には、
容積率が設定してあるため地域によって定められている制限を超える延べ床面積の建物を建設することができない。しかし隣接している建物が容積率を持て余している(もしくは欲している)場合に、空中権を設定し売買することで、事実上容積率を売買することが可能である。
英米諸国では、鉄道駅のプラットホーム上の容積率を駅舎や近隣土地の上に移して超高層ビルを建てる例(例えばニューヨークの
グランド・セントラル駅の横に
メットライフビルを建てた例)、高速道路の上の容積率を隣接地に移す例などがある。また歴史的建築を保存する際、建て替えができず頭上の容積率を生かすことのできない歴史的建築の所有者は、容積率以上の大きなビルを建てたい近隣の土地の所有者などに容積率を売ることができるようになっている。
◆法定地上権
法定地上権(ほうていちじょうけん)とは、同一の所有者に属する土地・建物について抵当権の実行または強制競売が行われた結果土地と建物の所有者が異なることとなったとき、法律の規定により発生する地上権のこと(・
民事執行法)。法定地上権が認められる時には、土地の評価の6〜7割の部分が法定地上権の部分として土地の評価から減額され、建物の評価に加算される。
競売の場合、土地・建物(法定地上権付)の競売であっても
超過競売になると法定地上権付の建物だけ競売で売却されることとなる(但書、)。ただし、所有者の同意があれば同時に売却はできる。
超過競売というのは、競売申立債権者の債権と執行費用が申し立てられた数個の
不動産の一部で
弁済可能な場合には全部を競売で売却すると過剰であるとして一部の売却しか認めない。
本来、不動産の購入を希望する者は、土地付きの建物を求めるのが通常である。しかし、この売り方ではなかなか売却されず、その結果、競売価格が下がり、競売申立債権者を害することが頻繁にある。その結果、所有者にも大きな損害を与える(本来なら余剰があり、配当されるべきものが、配当されなくなるなど)ことがある。理論的に言えば、超過競売はいけないといえるかもしれないが、現実的には庶民感覚とずれているともいえる。
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき
抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める()。
土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、その土地又は建物の
差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権を設定したものとみなす。この場合においては、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める(民事執行法第81条)。これは不動産に対する強制執行の規定で、不動産担保権の実行に準用されている()。
◇ 学説
土地及び建物に共同抵当権が設定された後、その建物が取り壊され新築された場合に、新建物に法定地上権が成立するかどうかに関する学説は以下の通り。
・ 個別価値考慮説:成立するとする。
・:土地と建物を、別々に価値を評価する。
・:建物の担保価値には、法定地上権の成立が、前提となっている。
・ 全体価値考慮説:成立しないとする。判例の立場。
・:共同抵当をした土地と建物のを、全体として価値を評価する。
;を参照。
◇ 判例
土地と建物が同一の所有に属すること
; 〔大連判大12.12.14〕
: 土地と建物を所有する者が土地に抵当権を設定した後に建物を第三者に売り渡した場合にも、本条(民法388条)の適用がある(法定地上権が成立する)。
;〔大判昭14.7.26〕
: 借地人が借地上の建物に一番抵当権を設定した後に土地の所有権を取得し、建物に二番抵当権を設定した場合には、法定地上権が成立する。
;〔最判昭44.2.14〕
: 借地人が借地上の建物に抵当権を設定した後、土地所有者がその建物の所有権を取得した場合、抵当権設定当時に土地及び地上建物が各別の所有者に属する限り、抵当権の実行による競売の際に右土地建物が同一の所有者に帰していても、法定地上権は成立しない。
;〔最判昭48.9.18〕
: 土地及び地上建物が同一所有者に属する場合に、土地のみに抵当権が設定され、これが実行されたときは、抵当権設定当時建物につき前主その他の者の所有名義の登記がされたままであっても、法定地上権が成立する。
;〔最判平2.1.22〕
: 土地を目的とする一番抵当権設定当時、土地と建物の所有者が異なっていた場合は、土地と建物が同一の所有となった後に次順位以下の抵当権が設定されても、一番抵当権がまだ消滅していない場合は、法定地上権は成立しない(競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に、その中の最先順位を基準として同一所有者要件の充足を考えるべきである)。
;〔最判平19.7.6〕
: 土地を目的とする先順位の甲抵当権が消滅した後に後順位の乙抵当権が実行された場合において、土地と地上建物が甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは法定地上権が成立する。
共有関係と法定地上権
;〔最判昭29.12.23〕
: 土地の共有者甲・乙の一人甲が、他の共有者乙の同意を得て、その地上に単独で建物を所有している場合に、その共有者甲の土地の持分権に設定された抵当権が実行されても、他の共有者乙の持分権の上にまで法定地上権が成立するものではない。
;〔最判昭44.11.4〕
: 土地の共有者甲・乙の一人甲が、予め他の共有者乙の同意を得て、その地上に単独で建物を所有している場合に、その共有者甲の建物に設定された抵当権が実行されたときは、法定地上権が成立する。
;〔最判昭46.12.21〕
: 建物の共有者甲・乙の一人甲がその敷地たる土地を単独で所有する場合に、その土地に設定された抵当権が実行されたときは、建物共有者全員のために法定地上権が成立する。
;〔最判平6.4.7〕
: 建物の共有者甲・乙の一人甲がその敷地たる土地を単独で所有する場合に、その建物の持分権に設定された抵当権が実行されたときは、法定地上権は成立しない。
;〔最判平6.12.20〕
: 地上建物の共有者のうちの一人甲の債務を担保するために、共有者の全員がそれぞれ持分に抵当権(共同抵当)を設定した場合、甲を含む共有者たちに属する土地について法定地上権は成立しない。
共同担保の競売
;〔大判明38.9.29〕
: 土地・建物が共同担保で、土地だけが競売されたときにも、法定地上権は成立する。
;〔大判昭6.10.29〕
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