中南米という語は地理学的な呼称、北米に対する概念であり、
アングロアメリカに対する
ラテンアメリカという語は文化圏としての意味合いで使われることが多いが、一般的な使われ方はきわめて曖昧である。これは、
アメリカ州において
スペインや
ポルトガルが
植民地としていた地域と、地理学的な中南米がほぼ重なるためである。ただし、メキシコは地理学的には北米に属する。
スペイン語圏のアメリカ諸国は元々、スペイン植民地時代は「インディアス」(インドの意)、独立後は「
イスパノアメリカ」(スペイン的なアメリカ)と呼ばれていたが、19世紀のイスパノアメリカの知識人は、スペインを遅れた後進的な国家だと考え、自国をイギリスやフランスのような先進国にすることを望んでいたため、彼らにとって「スペインのアメリカ」という呼ばれ方は屈辱的なものだった。そんな中で、
フランス第二帝政の皇帝
ナポレオン3世が1860年代に
メキシコへ出兵し、第二次
メキシコ帝国を打ち建てるに際して、フランス当局はメキシコとの文化的な繋がりを強調するため、「
ラテンアメリカ」(ラテン的なアメリカ)という言葉を用いた。当時はラテンというと、即座に
ローマ帝国やフランスの文化に繋がったため、イスパノアメリカの知識人はこの名称を受け入れ、以後
ブラジルを加えたこの地域をラテンアメリカと呼ぶようになった。つまり、この言葉は当初、植民地主義から始まった言葉だったのである。
小アンティル諸島のなかの10カ国、南アメリカ北西部のガイアナは英語、スリナムはオランダ語圏に入り、中央アメリカのペリーズでも英語が話される。それらを合わせた33カ国をラテンアメリカと呼ぶが、正確を期するための「ラテンアメリカとカリブ海」という表現が取られることがある。[増田義郎「世界史のなかのラテン・アメリカ」、増田義郎・山田睦男編『ラテン・アメリカ史?』山川出版社 19999年]